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        <title>ARCADIA</title>
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        <description>最愛の、あなたを　殺したのは、私。</description>
        <language>ja</language>
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            <title>記憶の糸(4)</title>
            <description><![CDATA[<p>　目の前の青年の向こうの水面に乱反射する光に目を細めながら、アルカディアスは呆然とその場に立ち尽くしていた。目の前の青年から目が離せなかった。まるで絵の中に迷い込んでしまったかのような錯覚を覚える。今自分が目にしているものがあまりにも非現実的で。それが目の前の青年そのものが非現実的であったからでもあった。</p>

<p>　「あなたは、・・・・・・誰？」<br />
　つぶやくような小さな声でアルカディアスはたずねた。<br />
　この村の若い男たちとはめったに口を利かないアルカディアスでも顔ぐらいは分かる。けれど、目の前の青年のことは今まで一度も見たことがなかった。いくら周りのことに鈍感なアルカディアスでも、こんな青年を一度でも目にしていれば嫌でも脳裏に焼きついて忘れることなんてできなかったはずだ。けれど、この青年のことは全く記憶になかったのだ。　　何よりこのあたりの、働く汗にまみれた浅黒い、がっしりとした体つきの男たちとは全く種が異なっていたのだから。</p>

<p>　青年は少しだけ目をみはるような表情になったが、やがてゆっくりと微笑んだ。</p>

<p>　「私ですか？------私の名前は・・・・・・、ルキア。旅を------しているんです。」<br />
　青年------『ルキア』は噛み砕くようにゆっくりと言葉をつむいだ。</p>

<p>　「ルキア・・・・・・。」<br />
　アルカディアスは、この青年の整った顔にぴったりの、綺麗な名前だと思った。そう思うと自然に口元がほころんでくるのを感じるのだった。 </p>

<p><br />
　「あなたは？」<br />
　さらっとした黒髪をふわりと風に揺らし、今度はルキアがたずねてきた。<br />
　アルカディアスは少々戸惑った。自分のことをなんと言ったらいいのか分からなかったからだ。こういうことはこれが初めてのことではなく、いつもそうなのだった。特に難しいことはないのに、アルカディアスにはどうしても自分を表現することができなかった。記憶のない自分へのひけめが自分を表現することにまでつながってしまっていた。これまでならこんな時、ドルがそばにいて助け舟を出してくれた。ドルと噂好きの女性たちのおかげで、このあたりでは自己紹介などしなくてもアルカディアスのことはみんな知ってくれていたので助かっていたのだ。<br />
　口を半開きにしたまま固まってしまったアルカディアスの困惑に気づいたのか、ルキアはふわりと微笑む。その微笑は少しだけアルカディアスの安心感を誘う。<br />
　「あなたの、名前は？」<br />
　小さな子供に言うような低い優しい声だった。その声に導かれるようにアルカディアスは口を動かした。<br />
　「アルカディアス・・・・・・です・・・・・・。」</p>

<p>　ルキアはまばたきをした。きっと時間にするととても短い間。けれどアルカディアスには、ルキアの長いまつげがゆるりと上下するかのように見えていた。</p>

<p>　「いい、名前だね。この星------『アルカディア』------の名前にちなんでいるのかな・・・・・・。いい名前を家族がつけてくれたんだね...」<br />
　限りなく優しいルキアの声。その言葉に、アルカディアスは胸がきゅうんとなるのを感じた。<br />
　ルキアは何気なく言った言葉なのかもしれないが、自分の名前をそんなふうに言ってくれた人はいなかった。あの、全てを受け入れてくれるかのような優しいドルでさえも。この、会ったばかりの、一言二言しか言葉を交わしていない青年がはじめてくれた救いの言葉。</p>

<p>　------自分の名前は、誰かがつけてくれたもので、その『誰か』は『家族』かもしれない。もしかしたら、ここに来る前にもこんな自分のことを愛してくれる存在がいたのかもしれない。</p>

<p>　そんな当たり前のことに気づかせてくれた。これまで空洞だった心の奥に暖かいそよ風が送り込まれてきたような感覚に、アルカディアスは思わず胸の前でこぶしをきゅっと握りしめた。アルカディアスは自分の頬に温かいものがつたってきたことに気づいてルキアから目をそらし、湖の方に顔を向けた。ルキアはまるで全てを分かっているようかのように何も言わなかった。</p>

<p>　しばらく二人は何も言わず、湖面に映る光と緑を見つめていた。 </p>]]></description>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">2章</category>
            
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">小説</category>
            
            <pubDate>Fri, 26 Dec 2008 23:48:35 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>記憶の糸(3)</title>
            <description><![CDATA[<p>　ドルの家から山奥に向かってしばらく歩いた先に開けた場所があり、そこに小さな湖があった。それほど遠い場所でもなかったが、アルカディアスのようなか細い女の足では少々きついぐらいだった。だが、周りに木々が豊富に茂っているせいかウサギやリスなどの小動物と出会うことも珍しくなく、いつの間にかここは、アルカディアスの心の休まるお気に入りの場所となっていた。アルカディアスは手伝いがない時にはいつもここに来ていた。こんなに素晴らしいところであるにもかかわらず、ここに来る者は、アルカディアスの来る時間には一人も見かけることはなかった。記憶がないことで他人に引け目を感じながら暮らしているアルカディアスにとっては、このことがとてもありがたかった。</p>

<p>　いつものように息を切らしながらやぶを抜けると、目の前に水面がぱあっと広がる。木々の隙間からのぞく青い空から降る陽の光が水面に反射してキラキラと輝き、思わずアルカディアスは目を細めた。<br />
　目が慣れてきて再び水面に視線を移した時、アルカディアスはぎくりとした。湖のほとりを歩いて数十歩というところに人の姿が見えたからだ。あまりの驚きに反射的に後ずさりしたのだが、長い服の裾が、細く小さい木からちょこんと出ている枝にひっかかって動けなくなってしまった。<br />
　「やだっ・・・・」<br />
　アルカディアスは枝にひっかかった裾を外そうとするのだが、焦っているためか手が震えてうまく外すことができない。嫌な汗がどっと出てくるのを感じる。</p>

<p>　その時、すっ、と目の前に影が落ちたかと思うと、白い大きな手が延びてきてアルカディアスは恐怖に身を縮めて硬く目をつぶった。<br />
　その途端、アルカディアスを捕らえていた木の重みがぽっとなくなる。<br />
『もしかしてこの人、木から裾を外してくれた？』<br />
恐る恐る薄目を開けると、細くさらりとした長い髪の先が垂れ下がっているのが目に入る。そのままゆっくりとその髪の主が上体を起こす------</p>

<p>　アルカディアスは思わず息を呑んだ。<br />
自分のすぐ目の前にまるで現実のものではないようなものが映っていたからだ。</p>

<p>　アメジストの宝石のように透き通った紫の瞳。その瞳を飾るかのような程よく長いまつげ。整った細い眉。<br />
　なめらかな肌の白さは女であるアルカディアスにも劣らない。すっと通った鼻立ちと形も色も良い唇は、ドルの家の祭壇に飾られた綺麗な女性の絵を思い起こさせる。<br />
　<br />
「なんて綺麗......」<br />
心の中で思っていたことなのに思わずアルカディアスは口に出していた。<br />
 </p>

<p><br />
　つややかな黒髪を胸のあたりまで伸ばした、絵から出てきたかのような容姿を持つその者は、ここのあたりの者ではないとすぐ分かった。だが、山の民の男が着るような、膝上ぐらいまでの丈の飾り気のない無地の白っぽい布を、腰の辺りでぐるりと紐でくくって止めた服を着ていた。すらりと伸びたその脚には少し幅のある紐で膝下ぐらいから斜め格子状に編みこんだ『ソル』という履物を着けている。それにしたって珍しいものではない。そんな素朴な服を着ていてさえ、容姿の鮮やかさは際立っていた。<br />
　<br />
　その者はアルカディアスに微笑みかける。<br />
　その微笑みに目を奪われながら、アルカディアスは夢うつつをさまよっているようなうわずった声で訊いた。<br />
　「あの・・・・・・、男の、人・・・・・・ですよね？」<br />
　「そうですよ」<br />
　少し笑いを含んだような声。その声は低いが、心地よい響きを持っていた。 </p>]]></description>
            <link>http://umias.net/words/arcadia/chapter2/3.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">2章</category>
            
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">小説</category>
            
            <pubDate>Fri, 26 Dec 2008 23:35:25 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>記憶の糸(2)</title>
            <description><![CDATA[<p>　アルカディアスは数ヶ月前、セレニクル山の山奥で一人倒れているところを、山菜取りに来たふもとの村の住民に助けられた。このセレニクル山は、ランドリア帝国の都であるプルヴァから北に遠く離れた場所にある、帝国中で一番高く険しいとされる山である。しかしその荘厳な姿から『神の山』として神聖視されていて、その山奥まで足を踏み入れるものは滅多にいなかった。そのセレニクル山のふもとには、サルクシアンという山の民が『サルクス』という村を作っており、アルカディアスを助けたのはそのサルクシアンの一人であった。しかしアルカディアスは、その時には既に自分の名前以外、年齢も、どこに住んでいたかも、何をしにこの山へ足を踏み入れたのかも思い出すことはできなかった。アルカディアスの立ち振る舞いの優雅さや言葉にも方言が混じっていないことからすると、『おそらく都から来た者ではないか』と皆は口をそろえたが、何しろ何も思い出せない以上、どうしようもないことであった。<br />
　村長はそんな自分を不憫に思ってくれ、嫁に行ってしまった娘の代わりにと、とてもかわいがってくれている。村の人たちも皆親切な人ばかりで、アルカディアスを見かけると気軽に声をかけてくれる。<br />
　しかしアルカディアスは、皆が親切にしてくれればくれるほど、心が痛んでしょうがなかった。</p>

<p>　正体不明の自分。<br />
　よもや天涯孤独の身で、誰にも必要とされていなかったのか。<br />
　あるいは自分は罪人なのではないか？　そんなことまでが頭をよぎる。だとしたらここの人たちにこんなに温かくしてもらえるような身ではない。</p>

<p>　アルカディアスは、いつも出口のない闇の中で手探りで歩いているような気がしていた。この村の暖かさに癒されながらなお、孤独だった。 </p>

<p></p>

<p>--------------------------------------------------------------------------------</p>

<p><br />
　「おはよう、アルカディアス」<br />
　朝------身支度を整え、1階に下りて行くと、村長が笑顔で迎えてくれた。齢60過ぎ。灰色の裾の長い服を着ている。その顔に刻まれた数本のしわは、生きてきた貫禄を感じさせる。それでいて彼に威圧感はなく、ただ穏やかに時を過ごしている、そんな雰囲気をかもしだしていた。彼の存在は、不思議と共にいる者をホッとさせる。<br />
　「おはようございます。ドル様」<br />
　アルカディアスは、村長のことをそう呼んでいた。本当は『ドルネイド=ダナクスク』という名前があるのだが、この村の人たちは親しみを込めてそう呼んでいるので、自然とアルカディアスもそう呼ぶようになっていたのだった。<br />
　「アルカディアス、今日はわたしは若い者たちと会合があって、昼間はこの家から留守にするから、後のことはムミナに任せてのんびり過ごしなさい」<br />
　ムミナ、というのはこの家に家政婦として来ている中年の女性だ。この家の隣りに住んでいる。ドルの妻がまだ存命だった頃から親交が深く、ドルの妻亡き後、自分から希望してドルの家のことをあれこれと世話をやいているらしい。ちょっと・・・・・・いやかなりダイナミックな体型と性格の持ち主である。</p>

<p>　「おっはよう！さあさ、朝食が出来上がりましたよ～ん」<br />
　部屋の扉が勢い良く開かれ、明るく元気な声がその場に響く。　ムミナは二人の為に朝食を作ってくれていたのだ。ムミナはお盆からスープを取りテーブルに置きながら、アルカディアスに声をかけた。<br />
　「なぁに、相変わらず顔色悪いね～！若いんだからもっともりもり食べて血色よくならなきゃ！あんたはまずそのガリガリの体型をなんとかしなきゃねー。あたしみたいにふっくらしなきゃさ！あたしゃ食欲旺盛。おかげで見るからに健康そのものでしょお」<br />
からからと笑うムミナだが、アルカディアスは言葉に詰まってしまう。ムミナのことは嫌いではないが、どう対処していいか困ってしまうので苦手だ。<br />
　「こらこら、人にはそれぞれの限界というものがあるのだから」<br />
　ドルが穏やかにムミナをたしなめる。</p>

<p><br />
　朝食を食べ終わり、ドルが会合に離れの小屋に行ってしまうと、アルカディアスは途端に暇になる。同じ年頃の子達はこの時間は皆、この村では村外に働きに出るか、家の手伝いをしている。しかし、ドルだけが暮らすこの家では客人が来る時以外はやることもそうそうないし、ほとんどはムミナが一人で済ましてしまう。のんびりペースのアルカディアスにはムミナのスピードについていけず、たまにできる時にちょこっと手伝う程度だ。<br />
　今日も手伝うことはないかとムミナに聞いてみたのだが、「アルカディアスは休んでて大丈夫よ」と一蹴されてしまったため、やはりやることはなさそうだった。アルカディアスはいつものお気に入りの場所に出かけることにした。 </p>]]></description>
            <link>http://umias.net/words/arcadia/chapter2/2.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">2章</category>
            
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">小説</category>
            
            <pubDate>Fri, 26 Dec 2008 23:30:26 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>記憶の糸(1)</title>
            <description><![CDATA[<blockquote>　「アルカディアス」

<p>　アルカディアスは名前を呼ばれた。<br />
　呼ばれた相手に敬意を表し、その場に膝をつき深く頭をたれる。</p>

<p>　「よい。面(おもて)を上げよ」<br />
　「はい」<br />
　その言葉にアルカディアスがおずおずと顔を上げると、声の主は微笑み、そして急に真面目な顔になって言った。</p>

<p>　「この間の話・・・・・・考えてもらえたかな？」<br />
　『やはり、そのお話のこと・・・・・・』<br />
　その内容にアルカディアスは自ずと体が強張るのを感じる。</p>

<p><br />
　「"彼"は危険人物だ。彼の力を奪い取らなければ世界の・・・・・・、否、宇宙(コスモ)全体の脅威となる・・・・・・」<br />
　「ええ・・・・・・知っています・・・・・・」</p>

<p><br />
　「この前も言ったが、もう一度私からお前に頼むよ。アルカディアス・・・・・・お願いだ。どうか------、お前の封印の力で、やつの力を奪い取って欲しいのだ------。承知して------もらえないだろうか？」<br />
　相手の真剣な様子に、アルカディアスは胸をきゅうとつかまれるような苦しさに、眉をしかめた。</p>

<p><br />
　早く------答えを------言わなければ。<br />
　アルカディアスは口を開いた。</blockquote> </p>

<p></p>

<p><br />
　先日、真とひともんちゃくあってからというもの、由愛はここ数日家から出なかった。年も暮れだし外は寒いし出なくてもいいやと思う反面、せっかくの休みなのに自宅ばかりでは気がめいってしまう。さすがに飽き飽きして寝るかゲームをやるかテレビを見るかぐらいしかなくなる。</p>

<p>　そんな時。<br />
　由愛は転寝(うたたね)のまどろみの中で新たに前世の夢を見た・・・・・・</p>

<p><br />
　------　記憶の糸がほんの少しつず解(ほど)かれる・・・・・・</p>

<p><br />
　　　　　*****　　　*****</p>

<p><br />
　「きゃぁぁ！」<br />
　叫び声をあげてアルカディアスは寝台の上に飛び起きた。<br />
　夢の内容は全く覚えていなかった。<br />
　なのにものすごく恐ろしい夢であった事だけは事実だった。その証拠に心臓は早鐘を打っているし、体全体に嫌な汗をかいている。</p>

<p>　「何なの・・・・・・一体・・・・・・」<br />
　いつも見る夢。そうと分かるのにそれがどんな夢だったのかは一度起きると思い出すことが出来ない。<br />
　飛び起きたために乱れた長い髪を手で整えながらつぶやく。<br />
　汗で衣服がびしょびしょになり、少しだけ身震いする。このままでは風邪をひいてしまう、と寝台から降りて白く長い衣服の裾を床に引きずりながら着替えに向かう。</p>

<p>　木製のものがほとんどを占める質素な部屋。<br />
　年頃の娘らしい調度品などひとつもない。あるのは古ぼけた鏡台と衣服の収納かご、そして数個の木製の小物入れだけだ。<br />
数年前まではこの村の長の下の娘が使っていた部屋らしく、その頃はそれなりに娘らしい物も置いてあったというが、その娘が隣村に嫁に行く際に部屋の中の物はほとんど運び出されて今はない。その娘も今ではめったに帰っては来ないという。<br />
　何もない部屋だがアルカディアスは結構ここが気に入っていた。<br />
この何もないところが、自分にはふさわしいとも思う。</p>

<p><br />
　------そう。<br />
　名前以外、数ヶ月前までのことを何も覚えていないからっぽの自分。<br />
　何もないこの部屋はまるで自分のようだとアルカディアスは自嘲気味に思っていた。 </p>]]></description>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">2章</category>
            
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">小説</category>
            
            <pubDate>Fri, 26 Dec 2008 23:20:41 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>定められし出逢い(10)</title>
            <description><![CDATA[<p>　「レスマドリアン様」<br />
　ギリシア神殿風の、家の主(あるじ)によって"セミア宮"と名付けられた建物の中でキエラは、広間に作られた玉座に座りワイングラスを傾けるエドルの前にひざまずいた。<br />
　この"セミア宮"はエドルが持つ豪邸のうちの一つであり、いわゆる郊外の金持ちばかりが住まう高級住宅郡にある。およそ日本には似つかわしくないその邸宅は、知らない人が見れば酔狂な金持ちが建てた家として映ることだろう。<br />
　セミア宮とは、かつて「ARCADIA」という星の、全世界の中心的存在であった"ランドリア"という帝国で、レスマドリアンが本拠地として住んでいた宮であった。生まれ変わったレスマドリアン------すなわちエドルは、ARCADIAのセミア宮と同じような造りの建物を数年前にこの地に造った。エドルの父親は有名な実業家で母親も資産家の娘である。彼らは溺愛する息子のために、この豪邸を息子の希望通りに作り上げ、自由に使わせているのだった。<br />
　<br />
　キエラに名を呼ばれたエドルは玉座から立ち上がり、目の前の数段の階段を下りてキエラの元に歩み寄る。</p>

<p><br />
　「ヘネミルキアがアリスタイルと接触し始めたようです。」<br />
　キエラは英語でそう報告した。ここでの二人の会話は専ら英語である。それは二人の現世での母国が英語圏であることによるものだ。キエラの報告にエドルは少し動きを止め、何かを考えるそぶりを見せた。<br />
「そうか・・・・・・。・・・・・・まぁ当たり前だろうな。従者が主人のもとに帰るのは当然のことだ。キエラ、こうしてキミが現世でも私のもとに再び現れてくれたように。」<br />
そう言ってエドルはキエラを立ち上がらせ、自分の方に引き寄せる。やがてその指はキエラの背中をなぞり、エドルはキエラの首筋に口付けた。<br />
「あ・・・・・・」<br />
キエラの口から官能的な声が漏れる。</p>

<p><br />
　「ほうっておけ。どうせヘネミルキアは天の力を持たなければ僕には勝てないのだから。」<br />
そう言いながらもエドルはキエラの首筋から肩のラインをなぞるように唇を這わせ、慣れた手つきで豊かな胸を愛撫し続ける。<br />
「レ、スマドリアン様・・・・・・」<br />
喜びに胸を震わせながらキエラはエドルの背に手を回した。</p>

<p><br />
　「宇宙(コスモ)の支配権は僕がもらう。ヘネミルキアなんかには絶対に渡せない・・・・・・」<br />
エドルはうめくように、そう独白した。</p>

<p> </p>

<p><br />
<blockquote>歯車は再び回り始める。<br />
その果てに何が待つのかは、未だ誰にも分からぬこと------。</blockquote> <br />
</p>]]></description>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">小説</category>
            
            <pubDate>Fri, 26 Dec 2008 23:15:56 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>定められし出逢い(9)</title>
            <description><![CDATA[<p>「大公(ヘイレル)・・・・・・。」<br />
青年にそう呼ばれた真は少々苦々しい表情になる。<br />
「そんな称号はとうの昔に捨てた。思い出したくもないものを、呼ばれるたびにまざまざと思い出す忌々しい称号だ。」<br />
「申し訳ございません。呼び慣れているものでつい・・・・・・」<br />
そう言って青年は軽く頭を下げ、続けた。<br />
「では、ヘネミルキア様。------アルカディアス様には早く"天の力"を還していただかなくてはなりません。そのためには早く記憶を取り戻してもらわなくては・・・・・・」<br />
「分かっている。まぁ、そう焦るな」<br />
余裕の姿勢を崩さない真に青年は少々語気を強めた。<br />
「しかし・・・・・・、天の力がなければ貴方が宇宙(コスモ)の支配権を持つことは不可能です！万が一、レスマドリアンの手に渡りでもしたら・・・・・・」<br />
そんな青年の様子を横目で見やりながら、真はジーパンのポケットから煙草の箱とライターを取り出す。<br />
「心配するなアリスタイル。天の力はまだでも、地の力は息絶える寸前に還してもらっている。--------前世のようなみっともない死に方はしない」<br />
そう言いながら真は箱の端を叩いて煙草を一本取り出し、なおも心配そうな従者の顔を見ながらそれに火をつける。<br />
そんな主にアリスタイル、と呼ばれた青年はため息をつく。<br />
「貴方ともあろうものが・・・・・・随分と生ぬるいやり方をなさっているのですね・・・・・・。『逆らうものは皆殺し。言い寄ってくる女すらも次々と亡き者にした。帝国にならびなきほど美しく冷徹な悪魔』とも称された貴方なのに・・・・・・」<br />
その言葉を聞いた真は思わず口に含んでいた煙を勢い良く吹き出した。<br />
「お前・・・・・・それは褒め言葉とは違うってば」<br />
くっくっとおかしそうに腹を抱えて笑う真を見てアリスタイルはため息をつく。<br />
「貴方も随分変わられましたね・・・・・・」<br />
何ともいえない複雑な表情でそうつぶやく。そのつぶやきを聞き取って真は顔だけは笑った状態のまま、笑いを止めた。<br />
「そ。人間、長い人生の中には色々考えることもあるってこと。性格が変わってきてもおかしくないよ」<br />
そう言う真の表情と口調は完全に"現世の真"へと戻っていた。</p>

<p><br />
「アリスタイル。お前は『辻村　馨』になってもあんまり性格変わってないな・・・・・・」<br />
「私はこの性格が気に入っておりますので」<br />
真の言葉を皮肉ととったアリスタイル------馨は冷ややかに答える。その態度が"アリスタイルらしい"と呆れたように笑い続ける真に、馨は二度目の大きなため息をついた。</p>]]></description>
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            <pubDate>Fri, 26 Dec 2008 23:10:02 +0900</pubDate>
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        <item>
            <title>定められし出逢い(8)</title>
            <description><![CDATA[<p>あまりの真の真剣さに由愛は一瞬たじろぐ。<br />
「な、何よ、危険って・・・・・・、」<br />
不満そうな表情を隠せない由愛をなだめるように真は念を押す。<br />
「あいつの言うことを信用しちゃいけない。何をされるのか分かったもんじゃない。とにかくあいつは危険なんだ。」<br />
「"何をされる"・・・って・・・・・・？」<br />
由愛の言葉に真は大きくはーーーっ、と息を吐いて頭を抱える。<br />
「あのね、由愛ちゃん。オンナノコっていうのは油断すると何をされるのか分かんないものなの。襲われちゃったらどうするの？だからね、どんな時でも気を抜いちゃいけないのよ」<br />
何故かいきなりオカマ言葉になった真に、先ほどの真剣な瞳と物言いに驚いていた由愛は一気に脱力した。<br />
真にしてみると、今の由愛の怒りを静めようとわざとおちゃらけているのかもしれないが、それが由愛には余計に気に入らない。<br />
「------何かと思えば・・・。一体何考えてるわけ？そんなこと考えてるなんてあんたの頭の方がどうかしてるってば。だいたい、まだあたしはあの人とは一度しか、しかもさっきのちょっとしか会ってないんだよ？」<br />
呆れて言い返す由愛に、真は一瞬何かに納得したような顔をしたが、すぐに続けて言った。<br />
「確かに、今のあいつと由愛ちゃんは今日会ったばかり。でもね。・・・・・・前世では会っているんだ。だから全くの初対面とは違うんだよ」<br />
「そんな・・・イキナリそんなこと言われたって・・・・・・。変な先入観とか持ちたくないよ...」<br />
「とにかく、ダメなものはダメなんだ。由愛ちゃん」<br />
話に何の進展も見られない真の言い分に、由愛は少々キレた。<br />
「あのね。いい加減にしてくれない？確かに、前世であたしとあんたは恋人同士だったかもしれないけど、今は時代が違うの。あたしは前世だけにしばられたくないし、それで自分の行動が制限されるなんてゴメンなの！だから、あんたの指図はもう受けないからヨロシク。」<br />
そう言いおき、ストローでコーラをずずっと全てすするとさっさと立つ。<br />
「じゃぁね」<br />
由愛は憮然とした表情で真に背を向けると、真の反応を見る間もなくその場を後にした。<br />
 </p>

<p></p>

<p>--------------------------------------------------------------------------------</p>

<p>「手ごわいですね、彼女は」<br />
怒って店を出ていってしまった由愛の後姿を見送る真の背後から半分笑いをこらえているような声がした。<br />
「悪趣味だな。見ていたのか」<br />
振り返らずとも真にはそれが誰だか分かったようで、後ろを見ずに口の端を笑いの形にゆがめた。</p>

<p><br />
「魂はそのままでも、アルカディアス様とはまた随分違、・・・っと失礼。」<br />
そこまで言いかけて突然の声の主は言葉を止める。言外に皮肉を含ませて。<br />
その声の主------ダークグリーンのタートルネックのセーターを着たやけに色の白い青年は、今まで由愛が座っていた場所------真の正面の椅子に自分のトレーを持って腰を下ろした。肩まである色素の薄い髪がさらりと揺れる。<br />
「このままではあの娘の中にある貴方の力もまだ還してもらえそうもないですね・・・」<br />
それには答えず、真はストローの袋を指でもてあそんだ。 </p>]]></description>
            <link>http://umias.net/words/arcadia/chapter1/8.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">1章</category>
            
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">小説</category>
            
            <pubDate>Fri, 26 Dec 2008 23:03:57 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>定められし出逢い(7)</title>
            <description><![CDATA[<p>"レスマドリアン"</p>

<p><br />
この人との前世のことは、今は自分の中に全く浮かんでこない。<br />
けれど、先日の"キエラ"とかいう気味の悪い女性がその名前を何度も口にしていたことを思い出す。この人もあの仲間なのか。そう思うと、この人に問題がなくても何となく嫌な気持ちにもなるのだった。でも、それはこの人のせいではないので、由愛は極力そんな気持ちを隠した。<br />
しかし今、この人はさらりとものすごいことを言ってのけたような気もする。</p>

<p>"前世の夫"？</p>

<p>確かあのキエラとかいう女性も由愛のことを"奥様"と呼んだ。<br />
これはそういうことなのか？<br />
出さないようにしていたつもりだったのに由愛の顔に再び"不信感"という文字が出てしまっていたらしく、この外人------播磨エドル------も表情を曇らせた。</p>

<p>「ゴメン・・・・・・君は、記憶をなくしているっていうのに...急に現れてこんなこと言って・・・」<br />
その寂しそうな瞳------。<br />
その瞳に由愛には自分の記憶にこの人がいないことがとても申し訳なく感じてしまう。<br />
「ごめんなさい・・・あの、あたし・・・まだ前世とかって良く分かってなくて・・・数日前にいきなりあのシンとかいう変態からそのことを聞かされたばっかりだし・・・記憶も曖昧で・・・で・・・あの・・・」<br />
言っているうちになんと言ったらいいのか良く分からなくなって焦る由愛。エドルはそんな由愛を最初はきょとんとした顔で見つめていたが、すぐに満面の笑みをその端正な顔に湛えた。<br />
「アリガトウ。いきなり現れた僕をそんなに気遣ってくれて。ホントは僕もこんなに早くキミの前に現れるつもりじゃなかったんだ。でも・・・キミを見てたら懐かしさにどうしても会いたくなって・・・・・・。」<br />
「播磨さん・・・・・・」<br />
「エドル、でいいよ。みんなにソウ呼ばれてるし。」<br />
「あ、はい・・・」<br />
何故か敬語になってしまうのは、彼のかもし出す紳士的な雰囲気のせいだろう。</p>

<p><br />
その時<br />
「エドル------！」<br />
遠くから数人の女性の声がした。<br />
そちらに目をやると男女5、6人がいっせいにエドルの方を見ている。<br />
「ゴメンね。トモダチが呼んでるから・・・。近いうちに、また会ったら話------してくれるかな？」<br />
エドルは由愛の顔をじっと見て言った。<br />
「え、あ、は、はい・・・」<br />
エドルの瞳に心拍数が一気に上昇した由愛は、間の抜けた返事をしてしまったが、エドルの方はその肯定の返事に満足したらしく、由愛に向かって一度敬礼のポーズを取った後、友人のもとへと駆け出していった。</p>

<p>人ごみに消えてゆくエドルを、由愛はボーっと眺めていた。</p>

<p></p>

<p>すると。<br />
 </p>

<p>「あーあ・・・相変わらずキザなやっちゃなー」<br />
背後で聞き覚えのある声がした。<br />
エドルのステキさにぼうっとなっていた由愛の機嫌は一気に下降した。<br />
その声。<br />
忘れもしないお調子者の声。<br />
「またあんたなの！？」<br />
由愛はくるりと振り向いた。<br />
本当は振り向きたくもなかったが。</p>

<p>「ノンノン♪"あんた"じゃなくて俺はシン。そう呼んでってこの間も言ったでしょ？」<br />
果たして、由愛の思ったとおりそこには人差し指を目の前でちらちらと振りながら、その声の主------真がニコニコと不敵な笑みを浮かべて立っていた。</p>

<p></p>

<p>--------------------------------------------------------------------------------</p>

<p><br />
「・・・・・・今度は何！？」<br />
由愛はイライラして言った。<br />
由愛はまたしても口のうまいシンにノせられ、手近なファーストフード店に入らされることになってしまったのだ。</p>

<p>「あーあ。さっきのオニーチャンに対する態度とはエラい違いだよね・・・」<br />
ストローにかじりつきながらシンは恨めしそうな瞳を由愛に向ける。<br />
「あんたとあの人とは気品と姿勢が違うの」<br />
チーズバーガーにかじりつきながら由愛は答えた。<br />
「気品と姿勢、ねぇ・・・」<br />
シンはふーっと大げさにため息をついた。<br />
『1回会っただけでそんなの分かるもんかー』などとぶつぶつ悪態をついている。<br />
由愛は無視を決め込み、これ以降は食べることに専念することにした。</p>

<p>ポテトの箱に手を伸ばして視線をずらした由愛は、ふとシンの真剣な瞳と対面してしまった。<br />
由愛は思わずドキッとする。<br />
フェイント。こんなの卑怯だ。<br />
ぱっと目をそらした由愛にシンは言った。</p>

<p>「レスマドリアン。------あいつは、危険だ。気をつけたほうがいい。」 </p>]]></description>
            <link>http://umias.net/words/arcadia/chapter1/7.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">1章</category>
            
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">小説</category>
            
            <pubDate>Fri, 26 Dec 2008 22:55:54 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>定められし出逢い(6)</title>
            <description><![CDATA[<p>由愛は混乱していた。<br />
普通に考えれば、いきなり会ったその日にストーカーじみた怪しい男にいきなりキスを奪われたら気持ち悪い、と思うのが当たり前だ。実際、由愛はものすごく気分を害しているのだ。イライラする。<br />
けれど、由愛には完全に突き放すことは出来なかった。<br />
前世の記憶が邪魔するのだ。</p>

<p>確かに、------愛していた男。<br />
狂うほどに。</p>

<p><br />
２日たった今もその苛立ちは消えず、気晴らしにと街をふらついてみたが、何をしても気分は晴れることはなかった。<br />
日がかげりコートを着てもしみる寒さに、いい加減帰ろうとしたときだった。</p>

<p>ふと、一人の金髪の外国人と目が合ってしまった。<br />
何となくばつが悪くて目をそらした由愛だが、何故か気になって、ちらと目だけをそちらに向けたその時、由愛は心臓が止まりそうになった。<br />
なんと、その外国人は由愛をめがけて一目散に向かってきたのである。</p>

<p>『きゃ～っ、私、英語超苦手なのに！！！』</p>

<p>慌ててそこから立ち去ろうとするが、人ごみに押されて思うように進めない。そんな状況だというのにどこをどう抜けてきたのか、その外国人はあっという間に由愛の目の前に来ていた。<br />
青い---緑にも見えるその瞳。どこかのファッション誌に出てきそうなな整った顔立ちをしている。<br />
由愛は現実逃避したくなり、もしや自分を見ていると思っているのは自意識過剰で、この外国人は他の人を見ているかもしれないとと思いキョロキョロあたりを見回す。確かに誰もが長身で美形のその外国人に、珍しそうに目を留めるが、後は何事もなかっように去っていくのだ。</p>

<p>「あ、あの、エート...？」<br />
必死に何とか逃げる英語を頭の中で探してパニックになっている由愛を、その外国人はしばし目を細めて見つめてきた。とてもいとおしそうに。<br />
そして。 </p>

<p>「会いたかった...！！」<br />
そう手をとられて由愛はあっけにとられた。<br />
「へ？日本...語？」<br />
訝しそうにつぶやく由愛に、外国人はにこりと笑いかけた<br />
「日本語も得意だよ。必死に勉強したから。でも----もう君は、前世のことは本当に忘れてしまったんだね。」<br />
あまりの混乱のしように、他の事は頭に入っていなかった由愛だが<br />
"前世"<br />
その言葉だけは妙に頭に響いた。</p>

<p>この人も自分の前世と関係があるのか？</p>

<p>できるかぎり思い出そうと試みてみるが、どうしても思い出せない。加賀　真のときとは違う。自分がこの者を好きだったのか嫌いだったのかというようなそんな次元ではなく、全く何の感慨も沸いてこないのだ。<br />
この人は誰なのか。</p>

<p>「あなたは...だれ...？」<br />
由愛は呆然と口を動かした。<br />
それを聞いて外国人はしまった、というようにはにかんだような表情で自分の頭に手をやった。<br />
「ゴメン。------これじゃ、ただのアブない人だよね。」<br />
外国人の素直に慌てる仕草に、由愛の警戒心は少し薄らぐ。<br />
「ボクの名前は"播磨　エドル"。父が日本人でね、それもあって日本が好きなんだ。今、留学に来てるところ。そして------」<br />
そこで少し外国人は言葉を切った。少しだけ遠くを見つめる。<br />
「前世の名前は"レスマドリアン"------キミの前世の------夫だよ。」 </p>]]></description>
            <link>http://umias.net/words/arcadia/chapter1/6.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">小説</category>
            
            <pubDate>Fri, 26 Dec 2008 22:49:10 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>定められし出逢い(5)</title>
            <description><![CDATA[<p>「...アルカディアス...」<br />
真はそう、ささやくような声で呼びかけると、驚きのあまりちょっと離れていた由愛の目の前に、大またですっと歩み出た。次の瞬間、目の前いっぱいにシンの顔が広がり由愛の視界にはそれしか映らなくなった。</p>

<p>と。<br />
由愛は唇のあたりに何か柔らかいものの感触を感じた。<br />
それを由愛が理解するのに数十秒はかかった。</p>

<p>バチーン！</p>

<p>歯切れの良い音があたりいっぱいに響いた。通りを歩いていた人たちもぎょっとした様子で一斉にこっちを向く。</p>

<p>「いたた...」<br />
真は赤くあとのついた頬をさすっている。<br />
「こんの...変態男っっ！！女の敵！」<br />
由愛は真っ赤になって怒鳴った。そんな由愛の怒りを尻目に真は<br />
「無事再会を果たした恋人になんてことを...」<br />
などと言いながら、よよよ、とわざとらしく泣きまねをする。<br />
そんな真の様子を無視して由愛は続けた。<br />
「覚えておいて！今更何のつもりか知らないけどね！昔恋人だったからって現在でも恋人になるとは限らないんですからね！----これは立派な犯罪よッ！助けてくれたことには感謝するけど、二度と私に付きまとわないで！」<br />
"決まった"と由愛が思ったその瞬間、<br />
「---あ、もしかしてファーストキスだったとか？」<br />
真はしれっとしてそう言い放った。顔は真剣、言葉の調子はおちゃらけて、という器用な様子で由愛を指差す。『人差し指で人を指すなっ！』とイライラしつつ、今はそんなことどうでもいいと思い当たる。<br />
「おあいにく様！ファーストキスなんて幼稚園のときにとっくに済ませてますよっ！」<br />
そう言うと、真の反応など見ずにすたすたと足早に歩き始める。しかし、そこはやはり女の足。すぐに真に追いつかれてしまった。<br />
「ちょっとちょっと」<br />
「うるさいっ！ここで"この人は痴漢です！"って騒ぐよ！」<br />
さすがにその言葉に怯んだようすを見せた真だったが、立ち直りが早いらしく、すぐに気を取り直したように言った。<br />
「俺のことは大嫌いで結構。---でも、俺は由愛ちゃんを守る。くれぐれも---さっきの怖いオネェちゃんや金髪野郎の言うことには耳を貸しちゃダメだ。」<br />
『何よいきなり人格変わっちゃって...』<br />
由愛はさっきと同じ調子で言い返そうとしたが、あまりの真の真剣な瞳に言うタイミングを逃してしまった。真は由愛が逃げないことに安心したのか、行き場のなくなった勢いをもてあまして口をぱくぱくさせている由愛に向かってにこりと笑う。その笑みはどこか遠い昔を思い出させてドキドキする。その"昔"は自分が小さい頃、なんていう生易しい昔じゃなく...。けれどこの感覚は自分のものであって自分のものじゃない。<br />
「----ゴメンゴメン。さっきのは悪かった。男としてサイテーだよね...。---もうあんなことしないよ。本当に。信じて。」<br />
「信じて欲しかったらそれなりの誠意を見せてください。」<br />
謝罪の言葉を聞いて少し安心した由愛は静かに、そして冷ややかに言った。<br />
「ありがとう。」<br />
「......？あ、どうも...」<br />
由愛にはなぜここでお礼を言われるのか分からなかったが、とりあえず相槌を打っておいた。 </p>

<p>「俺はこんなおちゃらけたヤツだけどさ...。由愛ちゃんのことが好きなのは本当だよ。俺はずっとずっと...」<br />
そこで真は言葉を切った。後に続く言葉や感情をわざと自分自身で打ち切ったように。<br />
「------というわけで、...またね。」<br />
そう言って真はひらっと手を振って踵を返す。『へ？』というぐらい唐突でつながりがなく、展開についていけなかった。あっという間。<br />
「ちょ、ちょっと...待ちなさ...」<br />
由愛が引き止める声も聞かずに人ごみに姿を消していった。後を追ったが、ちょうど信号が変わって動き出す車のせいで由愛は足止めを食らってしまった。<br />
「なんなのよぉ～、もぉ～～～！！」<br />
いっぺんに事が起こって、何が何だか分からず由愛は周りの目も気にせずに地団太を踏んだ。<br />
『言いたいことだけ言ってあとはドロン！？...この疑問と中途半端な気持ちをどうすればいいってのよ...！？』<br />
「ムカツク！！」<br />
由愛の気持ちはこの一つに集約されて口を出た。しかし、その叫びは、真が消えた雑踏の中に空しく吸い込まれくていくだけだった。 </p>]]></description>
            <link>http://umias.net/words/arcadia/chapter1/5.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">1章</category>
            
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">小説</category>
            
            <pubDate>Fri, 26 Dec 2008 22:44:47 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>定められし出逢い(4)</title>
            <description><![CDATA[<p>---ここは、どこなの---？<br />
由愛は思った。</p>

<p>---あぁ。<br />
ここは、【あの場所】。</p>

<p>---ソウ　ヨ　ワタシ　ハ　ココ　ニ　イタ　ワ-----</p>

<p><br />
「侵入者だ！殺してしまえ！」<br />
どすの利いた低い声。</p>

<p><br />
目の前で起きていることが現実とは思えない。<br />
-----ヤメテ　ヤメテ----<br />
声にならない声でずっと叫んでいた。</p>

<p></p>

<p>-----血。<br />
眼前にあるのは多くの屍とそのモノから流れる血液。</p>

<p><br />
そしてその中には------</p>

<p><br />
「---い、やぁぁぁぁ-------！！！！」<br />
それは心の叫び。<br />
「死、なないでっ---！」<br />
勝手にあふれてくる涙。<br />
---ワタシニ　ハ　ナケル　シカク　モ　ナイノニ---<br />
「思い出したの...！私、思い出したわ...！だから、だからっ...！！！」<br />
まるでこの体が自分のものではないように感覚がない。<br />
手が震えて。<br />
目の前にある、もうモノになりかけている体のもう焦点の定まらぬうつろな瞳がゆっくりと動いた。</p>

<p></p>

<p>---自分は目の前で手を組む。<br />
力の発動。<br />
"あなたに還すための"<br />
今ならまだ間に合う。<br />
合わせたその手のひらから放った光が、もう息も絶え絶えのかの人の体を覆い尽くす。</p>

<p><br />
「あぁ...これで...」<br />
微かな安堵感に浸ったのもつかの間、それはすぐに悲しい現実によって打ち消される。</p>

<p><br />
目の前のかの人の、左胸に深く突き刺さる2本目の刃。<br />
見開かれたままの瞳。</p>

<p></p>

<p>----息を、することができなかった。</p>

<p><br />
--------------------------------------------------------------------------------<br />
 </p>

<p><br />
「ヘネミルキア......-----」<br />
それは自然に口を付いて出た言葉だった。由愛の意識の奥底でたった今目覚めた者の。<br />
そして由愛の腕は、真の背中へと回る。そしていとおしそうにその胸を引き寄せる----</p>

<p>プァン！</p>

<p>どこかでトラックが鳴らしたクラクションで、由愛は一気に現実に引き戻された。<br />
「-----な、なにっ！？」<br />
由愛ははじかれたようにその場を飛びのいた。<br />
心臓が早鐘を打っていた。</p>

<p>しかし、もう、由愛には分かっていた。<br />
今、見た自分は確かに在ったことを。<br />
そして多分、目の前の男をかつての自分が愛しいと感じていたことも。 </p>]]></description>
            <link>http://umias.net/words/arcadia/chapter1/4.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">小説</category>
            
            <pubDate>Tue, 26 Aug 2008 01:06:28 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>定められし出逢い(3)</title>
            <description><![CDATA[<p>「転生？」<br />
信じられずに由愛は聞き返した。手にしたティースプーンを握る指に思わず力がこもる。<br />
ここは駅ビルの中にある喫茶店。<br />
あの後、由愛は半ば強引にここに連れてこられたのであった。そして、彼は由愛にとんでもないことを話し始めたのだ。<br />
「そう。転生。君はとある人物の転生した姿というワケ。」<br />
相手はニコニコして答え、持っていた煙草に火をつける。</p>

<p>「...あたし、宗教系の話は本気にしない性質だから。勧誘しても無駄ですよ」<br />
明らかに怪しいヤツだ、と疑いのまなざしを向ける由愛。しかしそんなことを全く気にしないかのように男は続ける。<br />
「あ～。違う違う。宗教関係なし。...君は忘れちゃってるからしょうがないっちゃしょうがないんだけどもさ。これは本当。...だって、さっきの怖いオネエちゃん、見たでしょ？あれが何よりの証明。」<br />
　確かに、さきほどの体験は常識で考えられる範疇を越えている。由愛も、実際に体験しておきながら、まるで映画のワンシーンを見ただけのような気さえする。<br />
「----っ。」<br />
自分が相手のペースに引き込まれているのが分かった由愛はそれを振り切るようにテーブルを平手で叩いた。回りの客がいっせいにこっちを見る。<br />
「だいたい、あんた誰よ？名ぐらい名乗りなさいよね！」<br />
息巻く由愛だが、男は悪びれた様子もない。<br />
「あ、ごめん。言ったつもりになってた。--俺は加賀真。一応『かが　まこと』っていうんだけど、シンって呼んで欲しいな。」<br />
あまりの拍子抜けした態度に由愛は頭を抱えた。<br />
「......あの。加賀、さん？」<br />
"シン"云々のことはあえて無視して"加賀"のところを強調する。<br />
「ダメダメ。シンって呼んでよ。」<br />
「...いい加減にしてください。あまりわけ分からないこと言ってるとけーさつ呼びますよ。」<br />
「それは困る。あのね由愛ちゃん。---信じられなくても無理がないことだけど、全て本当のことなんだよ」<br />
「---転生だなんだって非現実的なことをいきなり言われても信じられるわけがないじゃないですか。---だいたいなんであたしの名前知ってるわけ？」<br />
「---俺は、ずっと由愛ちゃんを見ていたからね。」<br />
「---っ。---何で人のつけまわしたりするんですか！？」<br />
「もちろん...由愛ちゃんのことが好きだから。」<br />
由愛は脱力した。<br />
こんな訳のわからないストーカーじみた男にはもうつきあっていられない。<br />
「失礼しますっ！」<br />
由愛は勢い良く椅子から立ち上がり、伝票をつかんだ。あとくされがないように紅茶の代金を支払うためだ。<br />
レジのところでお金を払おうと財布を取り出すと、上からお札が降ってきた。<br />
「女の子に払わせるようなかっこ悪いまねはできないんでね～」<br />
男は満面の笑みを浮かべた。<br />
『---やばい。』<br />
由愛は、冷や汗が自分の背中を伝うのを感じた。</p>

<p><br />
 </p>

<p><br />
「どこまでついてくるんですかっ！いい加減にしてくださいっ！」<br />
店を出てもついてくる男がいい加減怖くなり、その恐怖を振り切るように由愛は叫んだ。前を向いたままで足早にその場を離れようとする由愛の手を男がつかむ。<br />
「離してくださいっ！」<br />
腕を思いっきり振ってその男-----真---から逃れようとしたが、</p>

<p>「アルカディアス！」<br />
----その声を聞いた途端、冷水に打たれたような感覚に襲われ、金縛りにあったように体が動かなくなってしまった。</p>

<p>そして。<br />
眼前に広がるのは----- </p>]]></description>
            <link>http://umias.net/words/arcadia/chapter1/3.html</link>
            <guid>http://umias.net/words/arcadia/chapter1/3.html</guid>
            
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">小説</category>
            
            <pubDate>Tue, 26 Aug 2008 00:09:00 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>定められし出逢い(2)</title>
            <description><![CDATA[<p>あまりの驚きに何の言葉も発することができない。<br />
何とか元いた場所へ戻ろうと足をふんばってみても、目に見えない大きな力に引っ張られてどうにもならない。どんどんキエラと名乗る女の方に吸い寄せられて行く。<br />
逆らえない-------！<br />
訳もわからないまま、由愛は本能でそう思った。<br />
そう、まぶたを堅く閉じたその時----</p>

<p>ぱしっ！</p>

<p>大きな音と共に、急に由愛の体を引っ張っていた強大な力がふっ、と消えた。宙高く浮いていた由愛の体は重力に引かれてバランスを失い、ぐらっと傾いだ。<br />
-------落ちる！--------<br />
由愛は、次に襲うはずの衝撃を覚悟した。</p>

<p>が。</p>

<p><br />
いつまでたっても、痛みは襲ってこなかった。<br />
痛みの代わりに与えられたのは、誰かのぬくもり。<br />
温かくて、<br />
力強くて<br />
そして<br />
懐かしい-----------</p>

<p></p>

<p>「どういうことっ！？」<br />
女の甲高い怒りに満ちた叫びが一帯にこだました。発したのはキエラだ。後少しというところで自分の行為を邪魔された怒り。叫びと同じ位怒りに燃えた瞳をこちらに向けている。<br />
でも由愛は、まだ正常に頭が機能していなかった。あまりの奇想天外さに、常識がついていっていなかった。<br />
上の空でそれを受ける。<br />
呆けている由愛の代わりに男の声が答えた。<br />
「久しぶりだな。キエラ。」<br />
低く、どこか苛立ちを含んだ声。<br />
それを聞いてキエラがはっとする。<br />
「...ヘネ...ミルキア！？...お前も転生していたのか！？」<br />
「覚えていてもらえて光栄だな。...もっとも、俺の方はお前とは会いたくもなかったが」<br />
「おのれっ...！」<br />
キエラの体から、怒りのオーラが立ち上るのを由愛は見た。<br />
それを男は冷ややかに見つめ返す。<br />
「やめておけ。今の俺にお前がかなうはずはない。俺が死ぬ前にアルカディアスから返してもらった力があるのだからな」<br />
「......」<br />
由愛には意味が分からなかったが、キエラにはわかったようだった。悔しそうに唇を震わせる。<br />
「退け、キエラ」<br />
なおも男は冷たく言い放つ。<br />
キエラは<br />
「-----おのれっ...。...今日のところは退くが...私は諦めはせぬ！...お前の力は完全ではないはず...。必ず...その娘を取り戻し、レスマドリアン様のもとにお連れしてみせる...！」<br />
掃き捨てるように言うとキエラは右手を宙に浮かせた、彼女の回りに一陣の風が舞いあがる。---------次の瞬間、それまでそこにあったはずのギリシア神殿風の柱も、キエラの姿も消えうせていた。 </p>

<p></p>

<p>由愛の周りに残されたのは、見慣れた公園の雑木林。<br />
そして、誰かの温かいぬくもり----------。</p>

<p><br />
やっとのことで顔を上げると、そのぬくもりの主と目が合った。<br />
その顔を見て由愛は驚きを隠せなかった。<br />
だってそれは、先日家の前にいた"あの男"だったのだから。 </p>]]></description>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">1章</category>
            
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">小説</category>
            
            <pubDate>Sat, 23 Aug 2008 12:22:32 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>定められし出逢い(1)</title>
            <description><![CDATA[<p>風の強い日だった。<br />
-----窓の外を見ると、そこに一人の男がいたのだ。男は何をするでもなく、ぽつんと由愛の家の前で立ち止まっていた。誰かを待っているように。昨今問題になっているストーカーかと思えるぐらい、その行動は不自然だった。</p>

<p>そして...彼の瞳と自分の瞳が...確かに合った---と思ったその時、ふっ...と突然、目に映る光景が変わる。<br />
「なに...？」<br />
つぶやいたその瞬間、言いようもない熱い感情がこみ上げてくる...</p>

<p><br />
『キミ　ハ　ソコニ　イルベキ　ジャ　ナイ...』<br />
頭に響く低い声。<br />
見知らぬようで、でも懐かしい------<br />
『サア...』<br />
差し伸べられる手。</p>

<p>【私はアナタを知っている-------？】</p>

<p><br />
我に返ったときにはもう、そこに彼の姿はなかった。<br />
「え...？」<br />
由愛は自分の頬に一筋の涙が流れているのに驚く。<br />
「なに...今の...何なの？----私...泣いてる...？どうして？」<br />
その問いは、風の音にかき消された。</p>

<p></p>

<p>　＊　＊　＊　＊　＊</p>

<p></p>

<p><br />
冬休みに入り、由愛は実家に帰ってくつろいでいたが、あの、先日会った男のことが頭から離れなかった。<br />
そんなもやもやを振り切るように、いつものお気に入りの場所である家から数分の公園に向かって歩いているところだった。</p>

<p><br />
「あれ？」<br />
歩いているうちに、由愛は妙な違和感を感じて立ち止まった。<br />
由愛はいつもと同じ、慣れた道を歩いているはずだった。いくら1年に数回しか帰らないとはいえ、何年も使ってきた道を間違えるはずがない...。<br />
なのに、何かが変なのだ。<br />
何度も同じところを回っているような気がするのだ。<br />
そして、それは単なる由愛の思い過ごしではなかった。</p>

<p></p>

<p>違和感。</p>

<p>警告。</p>

<p>ぐにゃり。<br />
---視界がゆがんだ。<br />
本能的に目をつぶり、次に目を開けたときには...。</p>

<p><br />
由愛は自分の目を疑わずにはいられなかった。<br />
そこは、中世ヨーロッパ風の...というよりはギリシア神殿に近い造りの建物の中だったのだ...。天井の高さと荘厳な装飾に圧倒される。<br />
「な......なん...」<br />
気が動転して何がなんだかわからなくなっている由愛の前に、一人の女性が姿を現した。<br />
「お待ちしておりました。奥様。」<br />
うやうやしく由愛の前に頭をたれる。その女性もやはり中世ヨーロッパかはたまたギリシア神話に出てくるような裾の長い衣装をまとっていた。<br />
"奥様！？"<br />
頭が上手く回らない。言っていることの意味が全く掴めないのだ。何しろ自分は今まで家の近くを散歩していたのではなかったか...！？それが一転してこうだ。しかも普通の高校生の自分にこの人は"奥様"などと言う...<br />
「な、なんかの間違いじゃ...ないですか？あたし、誰とも結婚して、ないし......」<br />
今問題にすべきはそんなことではないはずなのに、由愛にはそんなことしか言えなかった。 </p>

<p></p>

<p>そんな由愛に目の前の女性は声高らかに笑ってみせる。<br />
「やはり...あなたはお忘れでいらっしゃいますのね...」<br />
口元に笑みを残しつつ、女性は答える。<br />
「......あなたは、だれ......？」<br />
由愛は呆然として聞き返す。一体何を自分は忘れているというのか。<br />
「そうですわね...。この場合、私が名のるのが筋ですわね...。」<br />
妙に納得したように女性がにやりと笑う。</p>

<p>由愛はさっきから、生理的にこの女性に何かイヤなものを感じていた。好きとか嫌いとか...そんなものじゃ片付かない何かが...。<br />
「私の名前はキエラ。あなたの前世でのお世話役、とでも申しましょうか？」<br />
「前世......？？」<br />
由愛は繰り返した。小説とか漫画ではよく読んだ話。<br />
話としては面白くていいけれど、でもそんな話現実には考えられないと思っていた。だから...今そんなことを言われても信じられるわけがなかった。<br />
「何言ってるの？頭おかしいんじゃない...？」<br />
懸命にそれだけ言葉をつむいだ。<br />
そんな由愛のなけなしの努力もたいしたことではないというように、この女性---キエラは一蹴した。</p>

<p>「そう思いたくなる気持ちもわかりますわ...でも、これが現実。あなたは今全ての前世の記憶を失っている...。」<br />
そこでキエラは一呼吸置いた。由愛の目をまっすぐ見据える---。<br />
「でも、あなたにはどんなことをしても思い出してもらわなければなりません。わが君、レスマドリアンさまのために」<br />
そう、女が口にした途端、由愛は宙に浮いていた。 </p>]]></description>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">1章</category>
            
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">小説</category>
            
            <pubDate>Sat, 23 Aug 2008 12:10:39 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>はじまり</title>
            <description><![CDATA[<blockquote>遥か昔に滅びた惑星(ほし)があった。
それは地球という星より遠く遠く離れた惑星でのこと。

<p>その惑星の名は<br />
ARCADIA<br />
（アルカディア）</p>

<p>その惑星の名は、皮肉にも地球では【理想郷】と訳される。<br />
</blockquote></p>

<p>「何かが足りない」<br />
高宮由愛はそうつぶやいた。</p>

<p>由愛は聖真理亜女子学園高校に通う17歳。<br />
ここの学園は今どき珍しく完全寮制がとられており、外出にも許可が必要で、その時代錯誤さに、生徒たちも文句を言いつつ暮らしている。（とはいっても、生徒たちの中には教師や寮長らの目をうまくかいくぐっては他の高校の男子生徒とつきあう「つわもの」たちもいるが。）<br />
そんなわけでだいたい聖真理亜の生徒たちは男子のいない「ものたりなさ」を感じているわけだが、由愛が感じているのはそういうものではなかった。<br />
これは今日に限ったことではない。どうも最近は何かがしっくりこないのだ。何をしていても、何か自分に欠けているような気がしてならない。それがなんだかわからないけれど----。<br />
何事もなく時を過ごしている自分が、無性に嫌になるときがあった。</p>

<p>そしてさらに、最近由愛は誰かの視線を背中に感じるようになっていた。しかしいつも決まって振り向くと、誰の姿も見えないのだった。<br />
由愛はあまり物事にこだわらない主義なのだが、そう何度も続くと、さすがに気持ちのいいものではない。<br />
確かに由愛は昔から人ならざるものを見る機会が多かった。今回もそういう類のものだと由愛は思っていた。</p>

<p></p>

<p></p>

<p>「彼」に出会ったのは、-----------そんな頃。<br />
街にジングルベルが鳴り響く時期だった。</p>]]></description>
            <link>http://umias.net/words/arcadia/prevchapter/1-0.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">序章</category>
            
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">小説</category>
            
            <pubDate>Thu, 29 May 2008 16:33:54 +0900</pubDate>
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